26AW #19 TEA HORSE ROAD Introduction

11月末、SHAXI(沙渓)には強い光と陰の中、冷たい風が駆け抜けていました。雲南省にある、何もない田舎の風景にある古い小さい町です。

中庭を囲むようにコの字に配置された建物、風を遮り強い光を反射して中庭に柔らかい光を与える正面の大きな白い壁。窓枠や柱の継ぎ目に施された 精緻な木彫り、山水画のような天然の模様を持つ大理石でできた門構えや床。薄い色の筆で壁に描かれた山々の絵、詩。風水に基づいて建てられた光と 陰のコントラストが美しい迷宮のような家々は、昔の中国がそのままのような佇まいでした。古い家もそうならば、新しく建てられている家も同じように建 てられています。昔のお寺を改装した、いく種類もの雲南のお茶を嗜める茶房には中庭に円が描かれており、そこに立つと不思議な気を感じます。 タオの気の流れを感じる円だということでした。

茶馬古道の、南の茶の産地から北上してきたキャラバンが険しいチベット高原へ向かう前に立ち寄る大規模な中継地点交易拠点にあった町の一つが SHAXI(沙渓)です。シルクロードの南ルートの一つで、雲南のお茶をチベットに、チベットからの馬を中国王朝に、という交換ルートでした。何世紀にもわ たって多様な民族の商人や旅人が行き交う交易路にいたSHAXI(沙渓)の白族は、チベット、南アジアまで広がる陸路を担う商人で、古代から漢民族の王 朝とも密接な関係を持っていた彼らは異文化に対する包容力を持ちました。自らの土着信仰と道教の融和。気の流れと環境との調和。 雲南にでは今でも伝統的でかつ精巧な技術を持つ陶器、木彫り、石工の職人が活躍しています。 茶馬古道の馬と人しか通れない細い道が残っている山 水画そのものの薄墨が漂う吾木(WUMU)村は、1000種類の珍しい野性の薬草で山々は香りで満ちています。 そこには代々漢方を処せんする家系が今 でもあります。

私たちが訪れた黒陶作りの職人は代々、始まりがいつかわからないほどの昔から、独自の焼成技法での黒陶作りをしてきた家系です。色々尋ねても、技術 の説明、家系の始まり、などについてあまり言葉にしません。昔からあったもので、生活にあるもので、それ以上ではなく、威張るものでもなく、自分たちにと ってそれが『道』だから、と。

老女と目が合い、こんにちは、と言うと、お茶を飲みにくる?と誘われ中庭に入ると、老女の仲間が歌を歌っています。一緒に美味しいお茶と木の実を振る舞 われ、言葉も通じないのに気持ちのいい時が流れていきます。すべてが、何かを主張せず、結論も求めず、毎日の生活に溶け込んでいる、不思議な居心地良 さ。茶馬古道が生み出した文化は長い年月をかけて生活に根付いた、特別な美意識と精神を持つ文化でした。自然体の、静かな、内なる、洗練。